元々は航空会社の整備士として羽田空港で仕事をしていましたが、東日本大震災をきっかけに地元・仙台で「コーヒーを片手に集まれる場所を作りたい」と思ったことが始まりです。

初めはカフェを開業しようと考えていましたが、旅行で行ったサンフランシスコであるコーヒーショップを見た時に「これを仙台でやりたい！」と強く思ったことが転機となりました。

そのお店は広い店内に焙煎機が置いてあり、カウンターではバリスタがエスプレッソマシンでラテを淹れながらお客様と楽しそうに話す姿に憧れて「こんなお店が仙台にあったら毎日行きたいな」と思いました。

今の卸町店がその形に近くて焙煎、抽出が目の前で見える形になっていますが、本店は抽出よりもお客様とのコミュニケーションを大事にしたくて作りました。自然のものを使い、お店に来るだけでホッと落ち着けるような場所を作りたくて、今の「なないろの里」にお店を作りました。

コーヒーが美味しいことはもちろんですが、お客様を温かく迎えることにも大事にしています。

コーヒーショップと言っても「接客業」であることには変わりはありません。

「自分のためのコーヒー」ではなく、「誰かのために淹れるコーヒー」を淹れたいと常に考えていますし、今バリスタとしてお店を盛り上げてくれているスタッフのみんなにも大切にしてもらいたいと考えています。

そのためには日々美味しいコーヒーを淹れるための検証や練習をすることはもちろんですが、笑顔や挨拶、コミュニケーションを欠かさないようにしています。

あとは「楽しく仕事をすること」も大切にしています。楽しく働いているバリスタがいて、お店のスタッフがみんな笑顔でお客様を迎えてくれるお店が近くにあったら、お店に行くのもコーヒーを飲むのも楽しくなりますし、「また行きたい」と思えるお店になると思います。

想い想いの時間を過ごしてほしいといつも思っています。そのために、出来るだけ選択肢を増やせるようにと考えています。

もちろん、本を片手にコーヒーだけを楽しむのも良いですが、コーヒーに合わせてパンやケーキ、フードメニューも一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。

お店があまり大きくないので、4名以上のお客様は入りづらいですが、お子様連れのお客様にも安心して来ていただけるようにコーヒー以外のメニューやディカフェを使ったコーヒーも常時楽しめるようになっています。

良かったことはたくさんあります。

初めは私が淹れるコーヒーを楽しんでもらえる方がいるだけで嬉しかったですし、「美味しかったから」とまた来ていただけるのはお店を始めて良かったと思える瞬間です。

 

今は店舗も増え、スタッフのみんなが淹れるコーヒーをお客様が楽しんでいる姿を見るだけで「こういうお店を作れてよかった」と心から思いますし、私が焙煎したコーヒーをご自宅でも楽しんでいただけるお客様が増えたことはここ最近の中で特に嬉しいです。

あとはお店から日本チャンピオンが生まれたことも大きいです。

お店を始めるまではコーヒーの仕事で海外に行けるとは思っていなかったので、努力を積み重ねることで新しい世界が見えてくるということをチャンピオンになったスタッフの小原から学びました。

コーヒーを評価するときに見ている項目はたくさんありますが、KEYAKI COFFEEでは、特に「甘さ」と「質感」があり、「後味が綺麗」なコーヒーを選ぶようにしています。

これは私がバリスタからロースターになったことが影響していると思いますが、常に生豆を選ぶとき、焙煎するときに「エスプレッソにしても美味しいのか」を考えています。

生豆を買い付ける段階で「甘さと質感」のあるコーヒーを選んでおかないと焙煎で作り出すことができませんし、焙煎でできていないものを抽出で引き出そうと思っても、元々ないものを表現することはできません。

「甘さがあって、質感が良くて、後味が綺麗なコーヒー」はコーヒーが苦手な方が飲んでも「美味しい」と感じていただきやすいと思いますし、エスプレッソにしても楽しめると思っています。

お店ではミルクを使ったドリンクも多く提供していますが、ベースとなるエスプレッソが美味しくないとミルクを使ったラテやカプチーノも楽しめないので、買い付ける時、焙煎するときは特に気をつけています。

2020年に卸町店をオープンさせていただきましたが、次の店舗のことも視野に入れて準備を進めています。

これは最初の動機に戻りますが、「コーヒーを片手に集まれる場所を作りたい」というのが私の夢なので、これからも店舗は増えていくと思います。

新しい土地でそこに住まれている方たちが美味しいコーヒーを片手に笑顔に過ごす時間を考えるだけで楽しくなりますし、新しいことに挑戦することはいつもワクワクします。

そのためにも、日々の営業でも美味しいものを作り続けることも大事ですし、スタッフのみんなが楽しく、やりたいことができるように環境を整えていくのが今の私の仕事だと思っています。

目の前のお客様に美味しいコーヒーを淹れたいという気持ちももちろんありますが、今は焙煎やスタッフ教育、職場環境を整えることでお店に来ていただくお客様が「来て良かった」と思える瞬間をたくさん作りたいと考えています。